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ドヴォジャーク:交響詩「野鳩」Holoubek作品110, B.198

野鳩
1895年4月アメリカから帰国し、翌96年1月4日ルドルフィヌム会館で「新世界交響曲」など、自作演奏会を指揮したドヴォジャークは、ただちに交響詩の作曲にとりかかった。交響詩は1874年に「狂詩曲」イ短調、作品14,B.44を書いているが、今回は本格的なもので、題材としたのは12編からなるエルベンの詩集「民話の花束 Kytice 」(1853年作)である。交響詩4部作は1896年1月から3月にかけ最初の3つ「水の精」、「真昼の魔女」、「金の紡ぎ車」が書かれ、10月から11月にかけ4番目の「野鳩」が完成した。

詩人にして歴史家、プラハ市最初の古文書係でもあったK・J・エルベン(1811~70)は、スラヴ民族の民謡や民話を大量に収集し、19世紀半ばのチェコ民族復興運動に多大の影響を与えた人物で、「民話の花束」は、「ボヘミア民謡集」とともに彼の代表作である。

ドヴォジャークはエルベンの詩を題材に、以前にも歌曲集「孤児」と「ローズマリー」作品5、B.21(1871年)、およびカンタータ「幽霊の花嫁」作品69,B.135(1885年)を作曲していた。なお1年後の1897年にもう一つ、交響詩「英雄の歌」作品111,B.199を書いている。

「野鳩」は1896年10月22日から11月18日までの間に作曲され、翌々1898年3月20日、ヤナーチェク指揮ブルノのチェコ民族楽団Česká národní kapelaによりベセドニー会館で初演された。さらに翌1899年11月3日ウィーンで、マーラーが当地のフィルハーモニーを指揮して公演した。

オーケストレーション:ピッコロ、フルート2、コール・アングレ、オーボエ、クラリネット2、バス・クラリネット、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、タンバリン、ハープ、弦。
本邦初演は1983年6月30日に、コシュレル指揮、都響により行われた。

野 鳩
墓地をめぐり、切り通しの小道;そこを泣きながら、若く美しい未亡人が行く。
亡き夫を思い出し、泣き悲しんでいた:これを最後に、亡夫の野辺送り。
白い館から、羽根飾り帽をかぶった美しい若者が、緑の野辺に馬を駆る、。
「泣くな、嘆きなさんな、若く美しい後家さんよ、
あんたの瞳が台無しになる、まともな言葉を聞きなさい。
泣くな、嘆きなさんな、きれいなバラの後家さんよ、
ご主人が亡くなったのなら、私を夫にすればいい」・・
女は一日目は泣き明かし、二日目は静かに過ぎ、
三日目に女の悲しみは、ゆっくり消えてゆく。
その日、亡き夫を、頭から消し去り:
一月も経たないうちに、結婚衣裳を縫っていた・・
墓地をめぐり、楽しげな小道:そこを行くのは、花婿と花嫁。
さんざめく結婚の宴となった:花嫁は腕に新しい夫を抱いてた。
結婚の宴となった、妙なる楽の音が響き:
男は女を抱き寄せ、女は微笑むばかり。・・
笑え、花嫁、笑顔こそ君にふさわしい:土の下の故人に、聞く耳はない!
恋人を抱け、恐がるな:棺はとても狭く、身動きもできぬ!
口づけなさい、待ち望んでた頬に、
怒る人がいても、その人はもう生き返らない!・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は過ぎ、すべては変る:無かったものが来て、あったものが失せる。
時は過ぎる、一年が一時間のように;
だが消えないものもある:厳然と立つ罪がそれ。
故人が墓に入って、三年が過ぎた;
その土まんじゅうの上に瑞々しい草が生い茂る。
土まんじゅうの上に草、その端には樫の木が、
その木の上にとまる一羽の白い鳩。
木に止まった鳩は、悲しげに鳴くクークーと:
この声を聞く者はみな、胸を打たれる。
中でも一番、心痛めるは、一人の女:
頭の髪をかきむしり、狂ったように叫ぶ:
「ばらさないで、叫ばないで、耳元でそんな声あげないで:
お前のむごい歌は、心に突きささる!
ばらさないで、責めないで、目がまわってしまう:
でも声高に叫ぶがいい、あたしがばらばらになるよう!」・・
川が流れる、波が波を追い、その波間に、白い衣が見え隠れ。
ここを足が流れ、あそこに白い手が:
不幸せな女が、自分の墓を探してる!・・
女は岸にひき上げられ、ひそかに埋められた、
道が小道と交わる、ライ麦畑に。
決して望まれない墓に、葬らるべきでなかった:
ただ大きな石が、女の体を押しつけてる。
でもその石が、重いとは言えない、
女の名の下に、呪いが憩うほどには!


楽曲解説
野鳩譜例
1)アンダンテ・マルチア・フネーブレ、ハ短調、4/4拍子。足を引きずるような低弦を伴うA葬送主題(譜例1)が、フルートとヴァイオリンが奏でられ、オーボエ、トランペットによる受け継がれ、涙のハ短調B主題(譜例2)が現われ、細かいヴァイオリン下降修飾音(未亡人の啜り泣き)が後に続く。さらにこの主題は、呪いの主題C(譜例2‘)となって展開される。

2)アレグロ:イ長調、2/4拍子。弦のトレモロ、ハープのアルペッジョを伴い、トランペットが陽気な愛人の出現を告げる(譜例3)。アンダンテとなり、陰鬱なA主題と、陽気なフルートの旋律(譜例4)が交互に現われ、未亡人の心の移ろいを描く。「亡き夫は頭から消え去り・・」。

3)モルト・ヴィヴァーチェ、ハ長調、3/4拍子。トランペットとトロンボーンのファンファーレで、暗い気分は一掃され、フルート、オーボエが歌い(譜例5)、タンバリンを交えた目くるめく舞踏となる=結婚の宴(譜例5’)。

4)ウン・ポーコ・メーノ・モッソで、弦を主体とした叙情的な愛の調べ(ワルツ)に変り(譜例6)、最初のパッセージ が戻ったあと、優美なアレグレット・グラチオーゾ部分(譜例7)が続く。アンダンテ、4/4拍子。「時は過ぎ去り、すべては変る・・」。フルート、オーボエのトレモロ、ハープの細分音、ヴァイオリンのトレモロの減七和音(鳩の鳴き声)下で、(譜例8)をはさみ、バス・クラリネットが不気味に唸り、ホルン、ファゴットなどで亡夫の呪い(C主題)がくり返し奏でられる。

5)メーノ・モッソ、ポーコ・ピウ・アニマート:全打楽器の強打でクライマックスに達する「不幸せな女が、自分の墓を探してる・・」。アンダンテで冒頭部分がA主題で再帰し、ヴァイオリン・ソロ(譜例9)が未亡人の悲哀を暗示する。さらにB、A主題が回想され、すべてを浄化する木管のコラール(譜例10)を経て静かに終る。

(2005年、EMIレコード解説、再構成転載)
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[ 2008/01/25 12:05 ] 音楽解説(チェコ音楽) | TB(-) | CM(-)



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