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アリアーヌと青髭

アリアーヌと青髭
20世紀初頭15年間に作曲された代表的なオペラは以下の通りである:

 (イタリックはフランス以外)
1900:シャルパンティエ「ルイーズ」、 「トスカ」
1901:マニャール「ゲルクール」、 「ルサルカ」
1902:ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」 「低地」
1903:サンサーンス「異邦人」
1904: 「イェヌーファ」「マダム・バタフライ」
1905: 「サロメ」「メリーウィドウ」
1906:マスネ「アリアーヌ」
1907:デュカス「アリアーヌと青髭」  「金鶏」
1909: 「エレクトラ」
1910: 「西部の娘」
1911:ラヴェル「スペインの時」、  「青髭公の城」「バラの騎士」
1912:  「ナキソス島のアリアドネ」
1913:フォーレ「ペネロープ」(1913)
1914:ルーセル「パドマーヴァティ王妃」(初演は1923年)

「魔法使いの弟子」で有名なデュカス(1865~1935)は、自己批判に厳しく寡作家で、晩年は後進の指導に献身し、弟子にはメシアンらがいた。

メーテルランク(1862~1949)の原作は、グリーグに優先権が与えられていたが、デュカスが作曲権を得た。このオペラの作曲は、ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』初演1902年完成直前から始められ、7年の歳月を費やし1906年暮に完成した。

初演は1907年5月10日、オペラ・コミック(サール・ファヴァール)で行われ、フランス以外でも1908年にウィーンで公演され、ドビュッシー、バルトーク、シェーンバルク、ツェムリンスキ(ウィーン初演を指揮)、ベルク、ウェーベルンに絶賛された。第一次世界大戦前に、ブリュッセル、ニューヨーク(トスカニーニ指揮、G・ファラー)、ミラノ、ブエノス・アイレスでもあい次いで上演されたが、ロンドンでは1937年になってからだった。


原作は困窮している人々の救済に努めたが無駄だった、初演の主役ルブランGeorgette Leblanc(1875~1941、女優、オペラ歌手、メーテルランクと同棲していた人妻)の経験をもとに書かれたらしく、別名「無益な解放」とも言われる。「だれにも他人は助けられない、自分自身を救った方がいい。5人の女は自由になるより安逸なハーレムでの隷属を選んだ。アリアーヌは、女たちが生きており、自分がその解放者で、他人も自分と同じ考えだと信じており、自己中心的な青髭を恐れない。彼女に救われるのは青髭だけである。アリアーヌのかかげる灯火は、迷路の糸の役目を果たし、彼女は若さと希望の化身である」。

ドビュッシーと親交のあったデュカスは先輩に敬意を表し、第2幕の囚われ女の一人メリザンドが登場する場面(練習番号88冒頭の2小節)と、3幕のはじめ(練習番号18から19にかけての8小節)に、ドビュッシーの『メリザンド』の主題を引用している。ドビュッシーの作を静的とすれば、デュカスのは動的と言える。このオペラは、イタリアのベル・カントや、フランスのグランド・オペラとはまったく異なり、旋律はオーケストラにまかされ、歌唱はドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」同様、フランス語の抑揚を活かしたパルランド風である。ここには1905年作ドビュッシーの「海」や、わずかにワーグナー、リムスキイ=コルサコフ、スクリアビンなどの影響もみられる。

登場人物は主人公アリアーヌと乳母、5人の前妻(一人は黙役)という、まさに“女だけのオペラ”で、舞台を見ないと声の区別がつきにくい。男役は青髭(B)が第1幕終りで20小節(5分程度)歌うだけで、3幕では黙役。3幕に登場する農夫3人(一人は老人)の場面もわずかで、あとは第1幕と第3幕の舞台裏での、農夫の二重合唱(イ音ユニゾンが優勢)のみである。女性歌手の歌唱時間は、アリアーヌ(Ms.or S.)が、第1幕で10分、第2幕で15分、第3幕で14分ほど。乳母(A.or Ms.)が、第1幕で8分、第3幕で少し。2,3幕に登場する5人の囚われ女の出番は、セリゼット(Ms.)、メリザンド(S.)、イグレーヌ(S.)、ベランジェール(S.)の順で、アラディーヌは黙役。メッゾ・ソプラノの主役にかかる比重が超絶的で、「ダイアモンドのアリア」など2,3ヶ所で上音域は2点イに達し、ドラマティックな歌唱が要求されている。

第1幕はハ調からもっとも遠い嬰ヘ短調ではじまり(のちにバルトークが『青髭公の城』で踏襲)、中間で嬰ヘ長調に転じその調性で終っている。第2幕は変ホ短調にはじまり、後半ハ長調となりロ長調に終る。第3幕は嬰ヘ短調で始まり同じ調で終っている。1幕最後から用いられているフランス民謡「オルラモンドの五人娘」の旋律を、ダンディも交響曲2番(デュカスに献呈)の第3、4楽章に引用している。

あらすじ
第1幕:
夜。青髭の城の大広間。外で農民たちが、6番目の妻アリアーヌを迎える暴君=青髭を罵っている。青髭から貰った6つの銀の鍵を、アリアーヌは供の乳母に渡し、次々と秘密の部屋を開けさせてゆき、中が紫水晶、サファイア、真珠、エメラルド、ルビー、眩いダイアモンドで満たされているのに驚く。しかしアリアーヌの関心は、禁じられている7番目の金の鍵の部屋で、扉を開けると暗闇の地下から、かつての5人の妻たちの声が聞こえてくる。その時、青髭が姿を現し、乳母が城の門を開けると、暴徒と化した農民たちが乱入してくる。青髭は剣を抜いて身構えるが、彼らはアリアーヌに押し止められ帰ってゆく。

第2幕:
昼間。大きな土牢。下に降りていったアリアーヌと乳母は、隅の暗がりでボロを纏い縮こまり、毎日、望みもなく祈り歌い、泣いているだけの5人娘を抱き、助けに来たのだと慰める。アリアーヌは奥に錠のかかった扉をこじ開け、天井の窓ガラスを石で割ると、陽光が燦さんと広間にさしこむ。彼女は囚われの女たちを促し、海を見晴るかす広大な風景を眺めさすと、正午の鐘が鳴る。

第3幕:
夜。第1幕と同じく青髭の城。囚われの女たちは広間に上ってくるが、濠にかかる橋がはね上がり、濠の水嵩が増して逃げ出せない。怒れる農夫たちが青髭の馬車と7人の手下を襲い、青髭を傷つけ縛りあげる。彼らは血を流している青髭を城の中に連行し、復讐をアリアーヌにまかせる。しかし女たちは青髭の縄を解き、傷の手当てをして労わる。アリアーヌは青髭に別れを告げ、女たちを誘うが従う者は一人もおらず、乳母とともに城を去る。


楽曲解説:

アリアーヌと青髭譜例1
第1幕:
絶え間ない弦の32分音符トレモロの上で、ユニゾンのA主題が奏でられ、躍動的なB1主題、下降する激情的なB2主題のあと、怒れる農民たちの叫び「奴に死をǍ mort !」が聞こえてくる。これは男声二重合唱で、第2合唱部は「アー」というユニゾンから5度、3度の重音で歌う。それに怒りのB3主題が加わり、激しさを増してゆく。B4主題で乳母とアリアーヌが城に入ってくる。彼女らが次々に窓を閉めるので、ソロ・パートを含む合唱の声は次第に弱まる。アリアーヌは青髭から授った6つの銀の鍵を乳母に渡し、扉を一つ一つ開けさせてゆく。第1幕前半では乳母の方が饒舌である。

「Oh!」という乳母の叫びで、最初の紫水晶の部屋が開く。音楽はB1主題を背景に高揚し、後半に優美な下降主題(譜例1)が出る。またも乳母の「Oh!」の叫びで、第2のサファイアの部屋が開き、きらびやかな16分音符スターッカートの音楽(譜例2)が奏でられる。譜例1主題を経て、フルート、ハープ、チェレスタのグリッサンドで第3の真珠の部屋が開く。第4のエメラルドの部屋は、踊るような音楽(譜例3)で開かれ、ハープの上向グリッサンドで彩られる。第5のルビーの部屋は、木管、ハープ、弦が小刻みに上下動する、音の洪水で開かれる。アリアーヌに急き立てられ、乳母が第6のダイアモンドの部屋を開くと、管弦楽器すべての32分音符上下動、B1主題についで、アリアーヌの長大で劇的なアリア「この光り輝くダイアモンド」(譜例4、嬰へ長調)となる。B1主題がしばし顔を出し、弦は3連音オスティナートを奏でてゆく。最後の禁断の部屋の金の鍵はアリアーヌが自分で回す。A主題とともに地下の部屋から、「Ah!」という微かな声についで、娘たちの歌声「オルラモンドの五人娘、出口のありかを探してた・・」C主題が聞こえてくる。これはくり返す度に、音程と音量をあげてゆく。「娘たちは閉じた扉を叩いたが、開ける勇気はなかった」と頂点に達したところで、青髭の登場。彼はしばしアリアーヌを従わせようとするが、彼女は拒み「Ah!」と叫ぶと、B3主題、B2主題を背景に、外から農民の「奴に死を!」の叫び声がきこえてくる。彼らは石を投げて窓を割り、乳母が開けた脇の扉から乱入してくる。しかしアリアーヌは何も心配ないと彼らを引き下がらす。C主題、A主題が回想され静かな幕となる。

アリアーヌと青髭譜例2
第2幕:
前奏はやや長く、不気味な半音階的D主題、ゆったりしたC主題、か細いB2主題が交互に現われ、弦の半音階下降音型、弦の高音トレモロと続き、ティンパニが弱く時を刻む。アリアーヌは灯火をかかげ、乳母と洞窟の中へ降りてゆき、女たちを見つけ労わる。ヴィオラの嬰ハ連単音についで、上向主題(譜例5)が奏でられる。「春が来て闇を払い・・」で、背景に下降音型(譜例6)が出る。まず紹介されるのはセリゼットで、彼女は一番雄弁である。背景では絶えずC主題が奏でられている。アリアーヌは彼女たちを救いにきたと言い、逃げないわけを尋ねる。譜例5の音楽が鳴り、次いでメリザンドが紹介される(譜例7、ドビュッシーの主題引用)。物言わぬアラディーヌ(黙役)が紹介される場面では、譜例6が背景に流れる。このあたりのパッセージは『トリスタン』を連想させる。アリアーヌは女たちを見つめ、外界のすばらしさを熱っぽく歌いかける。この時、天井から落ちてきた水滴で、灯火が消え暗闇となる。C主題、譜例6、A主題の奏でられる中、アリアーヌは手探りで壁伝いに進み、女たちに助けられ奥の岩に登る。そしてガラス窓を石で破ると、闇の中に光が射しこんでくる。木管のトレモロを背景に彼女は「ここにあなた方の暁の鍵が・・ほら、今度はこれ・・」(譜例8-1)と歌い上げ、女たちは「Ah!」と歓声をあげる。B2主題を主にオーケストラはトゥッティで咆哮する。C主題の変形(譜例8-2)が弦で、さらにC主題がトランペットで高らかに奏でられる。
音楽は静まり、弦のトレモロ、フルートが、小鳥の囀り、梢を渡る風、カウベルの音を描写し、ヴァイオリンとヴィオラのソロがC主題を奏でる。セリゼットは「海だわ!」と叫び、眼下には緑の野原や海が、木管の上下動、弦のトレモロで描写される。この時、鐘の音が正午を告げる。女たちは高らかに「オルラモンドの五人娘、出口を見つけました」と歌い幕となる。

アリアーヌと青髭譜例2

第3幕:
前奏E1主題は、第2幕の譜例6の下降主題の変形で、低音クラリネットのC主題を伴う。ついで高音弦にE2主題が出て上下動の波に移行する。弦のスタッカートE3主題を経て、華やかな下降E4主題が現われる。「みんな自由にならなくちゃあ」とアリアーヌが歌う場面で、譜例1や譜例5の主題についで、メリザンド主題(譜例9)が現われる。アリアーヌは皆に衣服を整え、宝石で飾り立てさせる場面では、第1幕の譜例1など各部屋の音楽が再現されつゆく。イグレーヌは身を翻し「ア、ア、ア!」と笑い出す。アリアーヌはフルート・ソロを伴い「女性は小鳥や花をまねて・・」(譜例10-1)と歌い、譜例2から(譜例10―2)、譜例3へと続く。

不意に脇の扉が開いて、青髭が帰ってきたことを乳母が告げる。恐怖に脅える女たちは、外を見ようと窓辺に押し寄せ、青髭一味が襲われている光景を目にする(譜例11、前半はE1の変形、後半は農民たちの足音)。B1主題、B2主題の間にティンパニが轟き、セリゼットが「アリアーヌ、あたし恐い」と叫び、遠くから農民たちの「アー」という叫びが2度音程でくり返される。興奮の極み乳母が「Oh!」と叫ぶうちに、農民たちが城に迫り、声を揃えて叫ぶ「門を開けろ」(譜例12)と。アリアーヌは一人で彼らに対する。扉が開かれ、老農夫が話しかける「奥方、入ってよろしいかな」。彼らは傷つき縛り上げた青髭を、復讐を条件に引き渡し帰ってゆく。A主題のあと、C主題に乗って女たちが青髭の周りに集まり、彼を介抱しはじめる。背後の怒りのB2主題は、ヴァイオリン・ソロを伴い優しくなっている。E1主題、C主題、B2主題が静かに奏でられ、アリアーヌは青髭の縛めの縄をナイフで切る。E2主題、E1主題、C主題が静かに響く。

フォルテのE1主題と、ピアノのA主題が交互に奏でられ、これに静かなB2主題が続く。アリアーヌは、立ち上がり周囲を無言で見回す青髭の額に口づけし、「Adieu」と別れを告げ扉の方に向かう。E1、B2, E2, C, E2主題が次々と回想され、アリアーヌは「月と星が道を照らし・・」(譜例13)と歌い、D主題、E2主題, C主題、E1主題、ヴァイオリンの超高持続音、譜例5主題、A主題などが静かに奏でられる中、乳母を伴い城を去ってゆく。

録音:
1)Tony Aubin, *1, Orchestre francqise; Berthe Montmart(1968) LP
2)Armin Jordan *2, Katherine Ciescinski (1983) CD
3)Bernard de Billy, Wien Radio SO, Deborah Polaski (2006) CD
4)Leon Botsein, BBC SO , Lori Phillips (2007) CD

*1 本名Louis Alexandre(1907~81)Dukasの弟子。
*2 1932年ルツェルン生。息子のフィリップは2009年からバスティーユ・オペラの常任指揮者になる予定。
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[ 2008/04/25 11:38 ] 音楽解説(一般) | TB(-) | CM(-)



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